第14回全日本リレーオリエンテーリング選手権大会 大阪府代表監督報告 西田伸一

1.選手選考
 今回は例年とは方法を変えて、エントリー時の実績記入は不要とし、夏から秋(特に大会に出来るだけ近くて選手登録に間に合う10月)の大会の成績を見て監督が決定することにしました。
 またエントリーしてきた人は出来るだけ走れるように複数チームを出すこととし、最終的に補欠に回った人も一般クラスで走れる機会を作るようにしました。
 実際に選考が必要となったクラスはME、MS、MVの3クラスとなりました。複数チームの場合、戦力の均等化は行わず第1チームに最強メンバーを集めました。また、不測の事態が起こった場合も第1チームが常に最強になるように補欠の登録をしました。
 詳細は省きますが、各クラスの選考理由は次の通りです。

ME
第1チーム
 昨年もメンバーだった小林と諏訪は実績から見て文句なしで選出。
 3人目はWOC併設大会以降好調を維持している若い中村を選出。
第2チーム
 北川と、MEかMSのどちらでも良いと言っていた大林
 それに10月になってからエントリーしてきた笹田にしました。

MS
第1チーム
 戦力アップを図るため、瀧川をMEの第2チームではなくMSの第1チームに入れました。これに前年メンバーで若い川前と、東日本M35Aの優勝者の山根を入れました。
第2チーム
 実績から見て、昨年入賞メンバーの西田と城森を選出。これに復活後、好成績を収めている辻村を入れました。
第3チーム
 残りのエントリー者の内、まず実力的に抜き出ている沖浦を選出。
 これに若い永瀬君と岩水君を入れました。野澤君と坂本君には一般クラスに回ってもらうことになりました。
 なお、10月末の選手登録では、西田と沖浦を補欠にしました。これは、ME1で欠場者が出た場合は瀧川が昇格し、MS1に西田、MS2に沖浦が入れるようにするためです。ME2に欠場者が出た場合は瀧川の昇格は行わず、MS1の戦力維持を図る予定でした。また、MS1に欠場者が出た場合は、西田がMS1、沖浦がMS2に入れるようにしました。
 これらは複数チームエントリーの優位点を最大限生かすように工夫しました結果です。

MV
第1チーム
 実力的に抜き出た最年少の愛場は文句なしです。これに、夏頃から 上昇を維持している澤地を入れました。
 3人目は辻村と笠井の比較と言うことになりましたが、東日本でペナを した笠井が脱落。辻村を入れました。
第2チーム
 笠井と残りの前田・田中の3人としました。

2.大会結果
1)総合順位
1位 東京 29点
2位 愛知 26点
   京都 26点
   大阪 26点(ME9点、WE10点、MS4点、WV3点)
5位 茨城 19点
   神奈川19点
 昨年度の9位タイ(8点)から、大躍進しました。昨年度の6位は茨城県で17点だったため、20点獲得して6位入賞を目標としました。前日のミーティングでも、各チームの目標よりもまず団体として入賞を目指すことを皆さんに伝えましたが、男女選手権クラスで期待を上回る結果を出してくれたため、目標を遙かに超える結果となりました。

 ただし、厳しいことを言いますが、これが実力であるとは決して思ってほしくないです。今回の全日本リレーでの大阪府は、愛知WOCでの日本とよく似ています。WOCでは日本選手は今まででは考えられないような成績を連発しました。しかし今後のヨーロッパでのWOCで同様の成績を収められるとは誰も思っていません。日本選手は愛知のWOCに向けてトレーニングを重ね、間違いなく実力は上がっています。しかし、今回のような成績を出せたのはやはり地の利を大きな理由としてあげないわけにはいきません。
 ヨーロッパから遠い、暑い、そして地形・植生の異なった日本での開催は日本の選手に有利に働いています。お金のない東欧諸国の不参加あるいは少人数での参加、中堅国の成績不振は日本の順位を上げることになりました。しかし、北欧諸国はこの日本でもやはり強く、実力の差は縮まっていません。
 今回の全日本リレーは岡山での開催と言うことで、大阪府には有利に働いています。WOCと同じように中堅県のチームの参加数が若干減ったこと、あの藪藪テレインでは我々関西人以上に関東の中堅レベルランナーは苦労したであろうこと。そうしたことが大阪府の成績を押し上げています。そしてWOCと同じように、やはりトップクラスのチームとは大きく差がついていること。
 来年度は兵庫県の開催ですが、交通の便もよく今年と同じようにはならないと思います。来年度は真の実力を問われる年です。


2)各クラスの成績と監督コメント
ME(出場30チーム)
1位 茨城   2:36:19
2位 愛知1  2:38:35
3位 東京   2:38:47
4位 大阪1  2:48:36
         中村57:44(9)
         諏訪58:52(7)
         小林52:00(4)
−位 大阪2  DISQ
         笹田71:23(24)
         大林79:24(23)
         北川DISQ

第1チーム
 得点は間違いなく取れるだろう、一桁順位もいける、もしかしたら入賞も出来るかもしれない、と算段していたのが、第1回大会以来の入賞になる4位という期待を大きく上回る成績を収めました。
 中村君という一人の若手の登場が、MEのみならずMSまでも大きな影響を与え、今までの壁を突き破ってくれました。

第2チーム
 MS第1チームが上位入賞をすることを優先してチームを組んだため、ME第2チームはやや苦しいチーム編成となり、結局未完走に終わりました。MEについては無理せずに一般クラスのM21にエントリーした方が良かったかもしれません。


WE(出場14チーム)
1位 京都   2:17:50
2位 東京   2:30:50
3位 大阪   2:44:09
         澤地50:07(3)
         松本61:14(5)
         森澤52:48(3)

 昨年7位で初入賞を逃したときに、「来年は入賞したい」とレース後に決意を語っていましたが、目標を上回る素晴らしい成績で夢を現実にしてくれました。30代のベテラン二人に若手の大学生一人というバランスの取れたチーム編成で、それぞれが十分に実力を発揮してくれました。
 また、「入賞」という明確な目標を定めたことが今回の成績に繋がっているのではないかと思います。


MJ(出場19チーム)
1位 京都1  1:42:58
2位 神奈川1 1:51:03
3位 愛知1  2:00:02
10位 大阪  2:40:23
         仲田41:00(5)
         田島62:23(12)
         日浅57:00(10)

 3大会ぶりにMJチームが成立し出場しましたが、トップ(これは速すぎるが)に1時間あまり遅れて10位でした。
 成績はふるいませんでしたが、今の大阪府の状況では、まず出ることに意義があります。出場しなければ何も始まらないので、今回手を挙げてくれた4人にはこちらから感謝したいぐらいです。
 一走の仲田君の成績はなかなかの好タイムです。田島君・日浅君は結構かかってしまいましたが、まだまだ経験が浅いと思うので経験を積めばどんどん速くなると思います。
 来年も、MJに出られる人はMJに、年齢が超える人はMEに積極的に手を挙げてほしいです。



MS(出場19チーム)
1位 東京1  2:46:39
2位 埼玉   2:50:34
3位 大阪1  2:51:50
         川前61:10(3)
         山根53:32(1)
         瀧川57:08(3)
6位 大阪2  3:10:25
         西田73:51(10)
         城森67:11(11)
         辻村58:41(6)
11位 大阪3 3:34:29
         永瀬73:51(14)
         沖浦64:10(12)
         野澤76:28(11)

 質・量ともに他県から見たらうらやましいような陣容で3チームが出走しました。昨年の入賞メンバーから年寄り二人を第2チームに追放して結成した第1チームは一時はトップに立つなど常に優勝争いに絡み、3年ぶりにメダル獲得となりました。
 このチーム編成が出来たのも実はMEで中村君を起用できたからで、それによりもともとMEを希望していた瀧川君をMEの第2チームではなくMSに投入し、若返りとレベルアップを図ることが出来ました。
 実力の拮抗したメンバーが何人もいるので、来年以降も選考に頭を悩ますことになりそうですが、入賞は確実であってもメダル争い・優勝にはさらなるレベルアップが必要です。

第1チーム
 エリートランナーが走る東京と埼玉に3走で逆転されてしまいましたが、実力を十分発揮して3年ぶりの表彰台となりました。

第2チーム
 昨年の入賞メンバー二人に復活した辻村君を加えたチームで、三走の追い上げで6位入賞を果たしました。

第3チーム
 MSの3チーム参加は今回が初めてです。 19チーム中11位と健闘しました。愛知県や東京・神奈川の第2チームに勝っているのはすごいです。


WS(出場4チーム)
1位 千葉   2:46:38
2位 静岡   2:55:42
3位 大阪   3:04:17
         岩水62:12(3)
         瀧川54:36(2)
         青柳67:29(3)

 層の薄い女子では、30歳以上でも速いランナーはWEに引っ張られてしまうので、このクラスは狙い目です。完走すれば得点を取れる参加チーム数でしたが、表彰台に乗ってくれました。WSは30歳以上ですがこの年代はプライベートで大変な時期なので、チームを結成して参加してくれるだけで称賛に値します。来年は2チーム出場なんて声も聞こえてきますが、近いところですし、子守は旦那に任せて出場してくださいね。


MV(出場23チーム)
1位 三重1  2:34:55
2位 千葉   2:42:46
3位 埼玉   2:45:29
6位 大阪1  3:01:53
         澤地55:48(4)
         辻村74:14(12)
         愛場51:51(6)
−位 大阪2  DISQ
         前田68:50(18)
         笠井DISQ
         田中83:16

第1チーム
 三走の追い上げで2年ぶりの入賞に滑り込みました。1位との差は開いていますが、2〜5位との差は十分詰められる差で、今後も上位をねらえます。

第2チーム
 リレーでペナは最悪です。チームの成績が無くなってしまいます。


WV(出場3チーム)
1位 大阪   4:19:42
         四宮73:38(2)
         浦野85:39(1)
         辻村100:25(1)
2位 神奈川  3:49:56(3走リスタート)
−位 愛知   DISQ(2・3走未出走)

 タイム的には誉められたものではないけれども、たった3チーム(しかも内1チームは棄権)の参加しかなかったけれども、皆さんは間違いなく「日本一」です。WVは45歳以上ですが平均年齢61歳のチームが見事に完走し優勝してくれました。
 東日本大会の時に辻村さんに「走らなくても良い、ミスせずにまわれば時間内にゴールできて得点がもらえるので出ませんか」とそそのかしたのが発端で、それから作ったチームでした。


3.来年度に向けて
1)監督・世話役
 来年度の全日本リレーは隣県の兵庫県で11月5日(日)に開催されます。場所は神戸市近郊で関東からも参加し易くなりますし、大阪からは宿泊せずに余裕で行けるところです。
 兵庫県の開催のため、兵庫県OL協会理事の小生は運営に入ります、また、OLP兵庫会長の城森君も運営、愛場さんはコントローラーに就任する予定です。つまり今回の選手団から3人が自動的に抜けることになります。したがって、当然の事ながら小生は監督を続けることが出来ませんので、後任を選ぶようにお願いします。小生に指名権はありませんが、希望を言わせて貰うとMSもしくはMVの選手兼任で(専任でももちろん良いです)、関西在住者が適任と思います。
 また、このところ世話役をしていただいた田中さんも家庭の事情から来年度の世話役は出来なくなりそうなので、世話役も選ぶ必要があります。
競技者登録やエントリーなど世話役の仕事は重要なので、これもMS・MVから選ぶのが適当と思います。

2)大人数の参加で盛り上げよう
 今回は愛知県の12チームには負けましたが、2番目のチーム数の参加となりました。11チームは全出走チーム121チームのなんと11分の1、ほぼ10チームに1チームが大阪府のチームと言うことになりました。チーム数が多くさらに成績も良かったので、今まででは考えられないような盛り上がりがあったと思います。祝勝会までしてしまったのは、にわかには信じられないようなことでした。
 来年度も近場でもあるのでたくさんのチームで参加して、盛り上げながら好成績を収めて欲しいです。ただしあまり増えると収拾がつかなくなるので、1クラスの最大は3チームぐらいが適当と思います。また、選手団とは別になりますが、一般クラスにももっと出てもらって、応援とともに自分たちのレースも楽しんでもらえたらいいですね。
 気軽にさっと回ってこれるような楽なコースのクラスを設定しましょうか?
 来年度は前記したとおり宿泊せずに参加できますが、一体感を持つためにも可能な限りまとまって前泊した方がいいように思います。

3)選手強化
 今まで大阪府として選手強化をしてきていませんでしたし、全日本リレーの監督と言っても大会参加の時の一時的な監督で、監督主導で強化を行うことも行っていませんでした。強化は個人に任されていると言っても良かったと思います。
 大阪府協会は発足したばかりで、選手強化については全く何も考えていないと思います。これは兵庫県でも同じで、(なぜか小生は兵庫県の理事なのですが)兵庫県協会の活動の中に選手強化は全くありません。
 したがって、まだまだしばらくは強化は個人と場合によってはクラブで行うしかない状況が続くと思います。ただこうやって全日本リレーを目指すオリエンティアが増えてくると、色々な大会などでライバルとして競う合うようになれば、レベルアップにはつながっていくのではないかと思います。
 また、強化は若手・エリートクラスとマスターズ年令とは意味合いが違います。高校生・大学生・20歳代若手の実力向上はまさに強化です。走力・技術力・精神力と総合的に向上させる取り組みが必要です。
 府協会加盟の大学クラブと連携を取りながら、何らかの動きをせねばならないと思いますが、今のところ小生はノーアイデアです。
 また、小林君・諏訪君の後には年齢的に断層が出来ていますが、大阪府として特に何もしてこなくて、大学卒業生の府外からの流入がない状態では当然の結果かもしれません。
 もっとも、大学を卒業して社会人になったオリエンティアは、いわゆる働きすぎ、正確には働かされすぎの会社員になってしまい、我々の若い頃よりもきつい労働条件下で、とてもOLなんかやっていられないと離ざるを得ないようなケースが多いように思います。これへの対策はオリエンテーリング界では何ともしようがありません。
 一方マスターズ年令のオリエンティアの競技力向上は優先して取り組む課題ではありません。例えば今回のMS・MVの出場者を見ると、最近OLをはじめたのは澤地さんぐらいです。MSでは大半がかつてエリートクラスを走っています。ここで必要なことは、しばらくブランクのある者は体力の向上、継続している者は加齢による体力低下を減少させることです。体力の低下とともにスピードが落ち、速いスピードで使われていた技術もだんだん失われていきますが、基礎が出来ているので体力回復にやや遅れながらも技術はある程度戻ってくるのではないかと思います。
 したがってマスターズ年齢の者は、まずランニングの頻度を上げて体力を向上させることが第一と思いますし、これは個人で取り組むことが出来ます。

 以上大変長い報告となってしまいましたが、これほど楽しい大会は久しぶりでした。来年は役員をしていますが、大阪府の皆さんが今年と同じように好成績を収めることを期待しています。